日本公衆衛生学会にて発表

仙台市の検査結果は1989年10月25日から茨城県筑波研究学園都市で開かれる日本公衆衛生学会で発表された。

検査および調査は1986年から1988年まで行われた。仙台市の中央卸売市場や市内の小売店で売られていた輸入品の魚や貝、乳製品、農産物など計93点について農薬の残留濃度を調べた。

ドジョウ、ウナギで高濃度

魚介類の場合、DDT、BHCが検出されたのは24点中7点だった。DDT濃度が高かったのはドジョウの0.33ppm、BHCはウナギの0.15ppmだった。いずれもアジア産だった。

魚介類には食品衛生法で定める残留農薬基準はなかった。とはいえ、牛乳の基準である0.05ppmに比べかなりの高濃度だった。

国内産魚介類の10倍

平均値もDDTが0.022ppm、BHCが0.013ppmだった。いずれも同時期に調べた国内産魚介類中の平均濃度の約10倍の高さだった。

欧州産チーズすべてからDDT

魚などには食物連鎖で比較的農薬がたまりやすいとされている。しかし、日本では農産物のように日常的な残留農薬調査は行われていなかった。汚染の実態もあまり分かっていなかった。

このほか、欧州産のチーズ10点すべてからDDTが、8点からBHCが低濃度だが検出された。

日本では1971年に使用禁止

BHCやDDTはかつて、有機塩素系の殺虫剤として広く使われた。発がん性、肝毒性などが指摘された。環境での残留性が高いことから日本では1971年に使用禁止になった。しかし、1989年当時も、土壌中や魚介類にも濃縮されて少量は残っていた。

「外国産は生産地での農薬使用状況が分かりにくい」

仙台市役所の食品安全担当は「外国産食品は、生産地での農薬使用状況などが分かりにくく、安全確保が難しい」と説明した。そのうえで「日本で使用禁止になった農薬を使っている国がまだかなりある。監視を続けていくことが必要だ」と強調した。

厚生省乳肉衛生課の談話(コメント)

「魚介類の場合、養殖魚中の抗生物質などは調べている。だが、農産物と異なり農薬を直接使うものではないので、日常的な残留農薬検査はしていない。基準もない。輸入品については、外国で事故が起きたとか濃度が高いとかの報告があれば検査をする。DDTやBHCの濃度が高いということはあまり聞いたことがない。今後必要があれば調査する」

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